羊の種類とウールに関する詳しい特徴


主な羊種とその特徴

現在、世界中で飼育されている羊の数は約10億6,660 万頭、その産毛量 は洗い上げベースで153万トンと、全世界で生産される総ての繊維の3%を占めています(IWS「WOOL FACTS1997」による)。 哺乳類、偶蹄目、ウシ科に属するこの羊から採取されるウールは、有史以前から今日に至るまで、人類の生活に大きく貢献してきました。この羊の種類は 3,000余種といわれていますが、その中で特に我々とのかかわり合いの大きい主な羊種について、その特徴等を紹介します。

<提供:日本羊毛紡績会>
about_wool

メリノ種

メリノ(Merino)種は、現在、世界各地に広く分布し、世界で最も優れた品質の羊毛を、最も多く産出している羊種で、羊の代名詞的存在の羊である。
中でも、オーストラリア・メリノは特に優れており、他の国々のメリノ種とはいろいろ違った特性を備えている。スペイン・メリノ(Spanish Merino)を交配に交配を重ね、オーストラリアの気候風土、環境によく適応できるようにした。
あらゆる羊の中で最も白く、最も細く、かつ捲縮が多い。しかも、長くて丈夫で、しなやかで、衣料用に最も適した羊毛を産出する。オーストラリア・メリノは羊の芸術的羊種といえる。現在、オーストラリア・メリノは繊維の太さによって、次の三つのグループに大別されている。

1.ファイン・メリノ
(Australian Merino / Fine)
草を探して食べ歩く体力に劣るため、上質の牧草が豊富にある、限られた地方だけで飼育されている。繊維の太さは18~19ミクロン、繊維長は70~75mm位で、特に高級細番手使いの梳毛織物、ニットヤーン等に用いられている。

2.ミドル・メリノ
(Australian Merino / Medium)
繊維の太さは20~22ミクロン、平均繊維長はおおむね90mm位で、梳毛織物、超高級毛布等に用いられる。

3.ストロング・メリノ
(Australian Merino / Strong)
この羊は比較的厳しい環境にも耐えうる生命力を備えているため、南オーストラリア、西オーストラリアなどで広く飼われている。繊維の太さは23~25ミクロン、平均繊維長は100mm位で、梳毛織物、高級毛布等に用いられる。
比較的バルキー性があるため、我が国ではふとんや、紡績の原料として多く使われている。 1852年の統計では、フランスには3,300万頭の羊がいたが、その後、農作物の増産、飼牛への転換、戦争などで減少を続け、2017年には700万頭位になった。フランス・メリノは品質の均一性に乏しく、夾雑物の混入が多く、したがって、歩留まりが低い。これは、冬期に小屋に入れて飼育することが多いので、敷藁等の混入が多いためである。メリノタイプの羊毛はフランス羊毛のうち、15~20%程度で、これも小規模の飼育農家が全国に分散しているため、品質が多種多様で、一件あたりの数量が非常に少ない。 特殊な紡績糸原料として希少価値があるが、供給量が少ないことから「幻のウール」と呼ばれている。 ふとん用原料としては、フランス中部リムザン地方のテクセル種やシャロレー種がさらにバルキー性と耐久性をもっているので日本向けに需要は大きい。
比較的雨が少なく、牧草に恵まれている南島のカンタベリー、オタゴ、ネルソンの丘陵地帯で広く飼われているが、産毛量はニュージーランドウール全体の5%程度と、その量は余り多くない。現在ニュージーランドで飼育されているメリノは、長くて細い脚を持った軽量のメリノが多い。他の羊に比べて成長が遅いこと、出産率が低いこと、雄のみならず雌でも1割内外は角をもっているなどの特徴を持っている。 繊度(繊維の太さ)は19~24ミクロン程度である。

その他の羊たち

英国ケント州のロムニーの沼沢地方の原産で、この名がついている。英国種の長毛種に属する。英国内ではケント(Kent)の名で通っているが、英国以外の国では、ロムニー(Romney)、またはロムニーマーシュ(Romney Marsh)と呼ばれている。ニュージーランドで飼育されている羊の約45%がこの羊種で、現在我が国のカーペットに使用されている羊毛原料の70~80%がこのタイプ。
繊度は32~36ミクロン、繊維長は175~225mm。しかし、我が国で使われているのはアーリーショーン(Ealy Shorn)、あるいはセカンドシェアー(Second Shear)タイプのものが多く、繊維長は70~150mm程度のものが多い。カーペット用羊毛として、このニュージーランド・ロムニーは極めて著名で、ニュージーランドの代表的羊種。
ニュージーランドで作られたカーペット専用羊種。マッシー農科大学教授のF.W.ドライ博士によって、ロムニーマーシュ中、特にヘアリーな羊毛を持つ羊のみを多年にわたって交配を続けてできた改良種。ドライ博士の名を取ってドライスデールと命名された。
英国のブラックフェース(Scottish Blackface)より細く、色毛の混入がないので、高級カーペットウールとして好評である。繊度は35~45ミクロン、繊維長は100~150mm程度。
メリノとリンコルンの交配によって生み出された改良種。毛質の豊かなメリノに、肉質の良いリンコルンの両者の良いところを受け継いだ毛肉兼羊種。すなわち、メリノは栄養に乏しい草に耐え、乾燥に強く、毛は細い。一方、リンコルンのような英国長毛種は雨量の多い気候と、肥沃な土地で良質の牧草を必要とするが肉質は良好。この両者を兼ね備えている。
旺盛な食欲で成長が早く、山地から、豊饒な改良牧野にわたって育つので、オーストラリア、ウルガイ、アルゼンチン、チリなどで広く飼育されている。 毛はメリノより太いが、英国長毛種より細く、良質の羊毛を産出する。羊毛の特徴は手触りの柔らかさ、クリンプの均一性、フリース全体の均一性が高く、留まりが良い。バルキー性に富み、色毛の混入がなく、光沢も良い。繊度は28~32ミクロン、繊維長は125~150mm程度で、手編み毛糸などに向いている。
英国山岳地に住む、名前通り黒い顔の羊種。毛足が長く200~300mmで太めで、手触りが硬く、ヘアーが多い。
カーペット、腰掛け、スコッチツイードなどに使用されている。
ニュージーランドのマッシー農科大学のジョン・ペレン教授によって作られた羊種。ロムニーマーシュの雌羊とチェビオットの雄羊の交配による改良種。生活力があり、荒地でもよく育ち、ロムニーでは登れないような山地にも登って食をあさることができる。この羊は、雨の多い、荒れ果てた丘陵地にも棲息することができ、その羊毛は30~34ミクロンとロムニーよりも細く、フリースに腰があり、弾力性に富む。
手編み毛糸用として多用されている。ニュージーランドで飼育されている羊の約20%位がこのタイプで、繊維長は125mm程度。
1968年に初めて純血種として認められた羊種。
現在、ニュージーランドで飼育されている羊の約20%がこの種で、成熟が早く、良質の羊毛が取れる。